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捕虜からノーベル賞受賞物理学者へ:ウィスコンシン大学のハンス・ゲオルク・デメルト氏が94歳で死去

捕虜からノーベル賞受賞物理学者へ:ウィスコンシン大学のハンス・ゲオルク・デメルト氏が94歳で死去

アラン・ボイル

ハンス・デメルト
ワシントン大学の物理学者ハンス・デーメルト氏が、初期のイオントラップの一つを手に持っている。(ワシントン大学写真 / デイビス・フリーマン)

ワシントン大学は、同大学史上初のノーベル賞受賞者であるハンス・ゲオルク・デーメルト氏が長い闘病の末、シアトルで94歳で亡くなったと発表した。

デメルト氏は、イオントラップの研究で1989年にノーベル物理学賞を共同受賞した。イオントラップとは、電磁場の配列を利用して電荷を帯びた原子や素粒子を分離し、それらを所定の位置に保持して高精度の測定を行う装置の一種である。

「ハンス・デーメルト教授は、ワシントン大学物理学部を全米屈指の競争力を持つトップクラスの学部として確立しました」と、ワシントン大学の物理学者ブレイン・ヘッケル氏は本日のニュースリリースで述べました。「彼が卓上における高精度の基礎物理学実験で培った功績は、今もなお学部の強みとなっています。デーメルト教授が開発した電子トラップ技術は、現在ワシントン大学で新世代の研究者によって電子ニュートリノの質量測定実験に活用されています。」

デメルトはドイツ生まれで、ドイツ軍に従軍し、1945年のバルジの戦いで連合軍の捕虜となった。第二次世界大戦終結後、フランスの米軍捕虜収容所から解放され、物理学の勉強を再開した。デメルトは1955年にワシントン大学に入学した。

https://youtu.be/l2YWOa4Wb-8

「私は1959年に最初の高真空マグネトロントラップを作り、すぐに電子を約10秒間トラップし、軸共鳴、マグネトロン共鳴、サイクロトロン共鳴を検出できるようになりました」とデメルトはノーベル賞受賞自伝で回想している。

1989年のノーベル物理学賞受賞者には、イオントラップを用いた並行研究を進めたボン大学のヴォルフガング・パウル氏や、原子時計に応用される測定方法を発明したハーバード大学のノーマン・ラムゼイ氏がいた。

デメルトはノーベル賞を受賞したという知らせを受けると、数年間交際していた地元の医師ダイアナ・ダンドールに電話をかけて祝った。

「彼は真夜中に電話をかけてきて、『結婚してくれる?』と聞いてきたんです」と、ダンドール氏はワシントン大学から伝えられた記録の中で述べている。「彼がノーベル賞を受賞したら結婚しようね、と冗談を言い合っていたんです。それが彼なりのニュースの伝え方だったんです」

二人はその後すぐに結婚し、3月7日にデメルトが亡くなるまで一緒に暮らした。